「こぼすなさま」
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お寺の便所を東司(とうす)といいます。その入り口に「おんくろだのう うんじゃく」と書かれた貼紙を目にすることがあります。これは、穢れを浄化する霊力を持つ「烏芻沙摩明王(うすさまみょうおう)」を呼び出す呪文です。
生きるということは他の生き物の生命を奪うことにほかなりません。そしてその結果として糞尿を排泄します。 大方の生き物は、自分たちの排泄物と平気で共存していますが、ひとだけはそれを忌避します。それは生きることの「罪」にひとが気付いてしまったからではないでしょうか。ちょうどアダムとイブがひととしての知恵を獲得したとたんに楽園を追放されたのと同じように。 さて、ひとが糞尿と日々向き合う便所は生きていることの「罪」を自覚し、生かされていることへの「感謝」の念を抱くのにもっとも適した場所です。むかしのひとは、この呪文をそっと唱えることによって、そうした気持ちを確認し自己を浄化しようとしたのです。 私が創った「こぼすなさま」は、「烏芻沙摩明王」のご子息です。 彼は、食堂にあっては「食べ物をのこすなよ、こぼすなよ」と教え、便所にあっては「よこに飛ばすなよ、こぼすなよ」と注意を促し、私たちに清浄と謙虚と感謝の念 を思い出させてくれるのです。 自分が去っていくときに、自分が来たときよりもきれいにしておこうとすることは、食堂や便所での作法だけでなく、ひととしての身の処し方のすべてに通じるように思います。 こぼすなさまは見てござる 飲んで喰ろうて楽しんだ そなたが立ち去るその跡を 佐の字 |
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